旅の終わりに日が暮れて

「日の名残り」カズオ・イシグロ
1989年の英ブッカー賞受賞作品です。
そして、カズオ・イシグロは言わずもがな、2017年のノーベル文学賞受賞作家です。

「日の名残り」カズオイシグロ
「日の名残り」カズオイシグロ

主人公は、イギリスの貴族邸に務める老執事。
新しいアメリカ人主人の勧めで短い旅に出るのだけど、その最中でも執事の品格について考えたり、自分の最近の仕事ぶりを反省したりと、執事という仕事にずっとまい進してきたことがうかがえます。あまりに生真面目なので、時々、タカアンドトシのトシばりに「真面目か!」と心の中でツッコミを入れながら読みました。

旅の目的は、元主人に仕えていた時期に同僚だった女中頭に会うこと。
主人公は、イギリスの美しい田園風景の中を移動しつつ、執事という職業について考え、元主人のことや同じく執事だった父親のこと、かの女中頭とのことを回顧しながら淡々と旅を続けるのだけど、最後、特に目を引く出来事などがあるわけでもないのに、主人公の心情と実際の情景が相まって、ぐわっと胸が締め付けられます。

「わたしを離さないで」もだったけど、穏やかで淡々とした語り口(文章)からくる感情の揺さぶりがすごいです。平々淡々としたストーリーなのに飽きないし、知らない間にずっぽり引き込まれていて、最後には涙まで誘う。なんなんでしょう本当に。
カズオ・イシグロはノーベル文学賞に相応しい作家だと、改めて思いました。

あと、まだ2作しか読んでないけど、カズオ・イシグロ作品の読みやすさは、訳者の力量が大いに影響していると思います。こんな読みやすい翻訳本ってそうそうありません。


本作はイギリスが舞台。
読み進めていくうちに、イギリスに対する憧れみたいなものを以前持っていたことを、少し思い出しました。
流れで「わたしのイギリス事始めはね…」みたいなことを書こうと思ったけど、読書感想と合わせるとめちゃくちゃ長文になったので、分割してまた後日。


プロフィール

やすなり近影

やすなりゆきよ(yukiyoYasunari)

海潜(うみもぐ)イラストレーター。

趣味のスキューバダイビング繋がりで、イラストやデザインのお仕事をいただいたりしています。

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